神戸地方裁判所 平成3年(ワ)1577号 判決 1995年10月18日
原告
角野進
ほか一名
被告
板垣隆司
主文
一 被告は、原告角野進に対し、金六一八万七二七六円及びこれに対する平成元年八月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告角野賢子に対し、金五九八万七二七六円及びこれに対する平成元年八月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らのその余の請求を棄却する。
四 訴訟費用はこれを二分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。
五 この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
一 被告は、原告角野進に対し、金一四五〇万円及びこれに対する平成元年八月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告は、原告角野賢子に対し、金一三五〇万円及びこれに対する平成元年八月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事実の概要
一 本件は、後記交通事故により傷害を負い、後に自殺した訴外亡角野保広(以下「亡保広」という。)の相続人である原告らが、右自殺と後記交通事故との間には因果関係があると主張して、被告に対し、自動車損害賠償保障法三条に基づき、損害賠償を求める事案である。
なお、付帯請求は、後記交通事故発生の日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金である。
二 争いのない事実
1 交通事故(以下「本件事故」という。)の発生
(一) 発生日時
平成元年八月一二日午後一一時四八分ころ
(二) 発生場所
京都府竹野郡網野町浜詰四六番地の五二先路上
(三) 争いのない範囲の事故態様
亡保広は、本件事故の発生場所の道路北側の路肩付近で、友人と立ち話をしていた。
他方、被告は、普通乗用自動車(京五九そ二一〇七。以下「被告車両」という。)を運転して、右発生場所を西から東へ直進しようとしていた。
そして、被告車両が亡保広を跳ね飛ばし、同人を路肩に駐車中の他車に衝突させた。
2 責任原因
被告は、被告車両の運行供用者であり、自動車損害賠償保障法三条に基づき、亡保広の損害を賠償する責任がある。
3 亡保広の自殺
亡保広は、平成二年八月一五日、自殺により死亡した。
4 相続
亡保広の相続人は、父母である原告両名であり、その法定相続分は各二分の一である。
三 争点
本件の主要な争点は、次のとおりである。
1 亡保広の自殺と本件事故との因果関係、特に亡保広の既往症である躁鬱病との関連
2 損害額
四 争点1(亡保広の自殺と本件事故との因果関係等)に関する当事者の主張
1 原告の主張
(一) 亡保広は、昭和六三年一〇月ころから躁鬱病の病状が発現したが、同年一二月二三日から神戸大学医学部附属病院(以下「神大病院」という。)に通院加療し、平成元年三月ころには軽快していた。
そして、本件事故前には、神栄石野証券株式会社(以下「神栄石野証券」という。)に就職が内定しており、その症状は安定していた。
(二) 亡保広は、本件事故により、頭部外傷、頭蓋内出血等の傷害を受け、事故直後から前頭葉症状が発現し、異常な言動が目立つようになつた。
そして、(一)で述べたように、本件事故前には亡保広の症状は安定していたから、右異常な言動は、本件事故による頭部への傷害により、躁鬱病の症状が増悪したものであるといわざるをえない。
(三) 亡保広は、平成二年四月から、神栄石野証券で働き始めたが、仕事の内容は、営業関係の外回りであつた。
そして、本件事故による受傷内容である靱帯損傷等による左下肢の運動障害及び頭部外傷による頭痛等により仕事に対する不安をつのらせて、同年七月四日、退社を余儀なくされ、その後、本件事故をきつかけに再発した躁鬱病が高じて自殺に至つたものである。
(四) したがつて、本件事故がなければ、亡保広にこのような高度の躁鬱症状は発現しなかつたものであつて、亡保広の自殺と本件事故との間には相当因果関係がある。
2 被告の主張
(一) 亡保広の躁鬱病は、平成元年三月ころに軽快していたものではなく、本件事故当時、同人の状態は正常時の七ないし八割の状態であつた。
したがつて、本件事故後にも、同人は、躁鬱病の治療を受けているが、これはいつたん完治した躁鬱病が本件事故によつて再発したものではなく、事故前後を通じて、この点に関する同人の状態に変化はない。
(二) 亡保広の躁鬱病は、本件事故後約四か月を経過した平成元年一二月末ころには比較的症状が軽快し、平成二年三月には一人でオーストラリア旅行に出かけるなど、その症状は大幅に改善した。
そして、このような良好な状態は、同年四月に亡保広が神栄石野証券に入社し、その後の一か月間の研修期間中は続いていた。
(三) ところが、亡保広が同年五月に同社の塚口支店営業課に配属された後は、同人の不安と絶望感は次第に強くなり、ついには、退社、自殺に至つたものである。
(四) このように、同人の躁鬱病は、本件事故により症状が悪化したものではなく、むしろ、本件事故は右症状に何らの変化も与えなかつた。
そして、本件事故前後を通じて行われた治療によりいつたん改善された右症状が、就職を契機に悪化の一途をたどつたものであつて、本件事故が右悪化の要因になつたものではない。
したがつて、本件事故後の躁鬱病に関する治療費と本件事故との間には相当因果関係はない。また、亡保広の自殺と本件事故との間には相当因果関係はないから、原告らの請求のうち、同人の死亡に関する損害の部分は理由がない。
第三争点に対する判断
一 争点1(亡保広の自殺と本件事故との因果関係等)
1 亡保広の既往症である躁鬱病
甲第二二号証、第二四、第二五号証、第三〇号証、原告角野賢子の本人尋問の結果によると、亡保広の既往症である躁鬱病の本件事故前の状態に関し、次の事実を認めることができる。
(一) 亡保広は、昭和六三年一〇月ころから、抑うつ状態を呈するようになり、同年一一月七日から同月二八日まで、医療法人慈恵会新須磨病院(以下「新須磨病院」という。)の心療内科に通院した(実通院日数四日)。
(二) 亡保広は、躁鬱病との診断の下に、同年一二月二三日から平成元年三月一七日まで、神大病院精神科に通院して治療を受けた(実通院日数八日)。
右最終通院日である平成元年三月一七日現在、亡保広の抑うつ症状はなお続き、回復には後六か月ないし一二か月を要する見込みである旨の医師の判断があつたが、他方、亡保広及びその家族は、その症状は見違えるほどに快復したと判断し、同病院に通院するのを中止した。
そして、亡保広は、同年四月からは、大阪経済大学の四回生として通学するかたわら就職活動を行い、本件事故前には、神栄石野証券への就職が内定していた。
2 亡保広の入・通院状況
甲第三号証の一、第五号証の一、第七号証の一及び三、第八号証の一、第九号証の一及び三、第一〇号証の一、第一七ないし第二一号証、第二三ないし第二七号証、原告角野賢子の本人尋問の結果を総合すると、亡保広の本件事故後の入院及び通院状況に関し、次の事実を認めることができる。
(一) 亡保広は、本件事故後、救急車により財団法人丹後中央病院(以下「丹後中央病院」という。)に搬入され(搬入時は平成元年八月一三日)、頭部外傷Ⅱ型の診断を受けた。
(二) 亡保広は、同日、公立豊岡病院(以下「豊岡病院」という。)に転送され、同病院で、脳挫傷、左下肢打撲等の診断を受け、同日から同月一五日まで入院した。
(三) 亡保広は、同日、自宅近くの高橋病院(神戸市長田区所在)に転院し、同病院で、頭部外傷、頭蓋内出血、左膝関節内側側副靱帯損傷等の診断を受け、同日から同月二二日まで入院した。
(四) 亡保広は、同月二五日、神戸労災病院整形外科に通院し、左膝内側側副靱帯損傷の診断を受けた。
(五) 亡保広は、同月二六日、新須磨病院整形外科に通院し、左膝靱帯損傷、頭部外傷後遺症の診断を受けた。
また、同人は、同年一〇月二五日、同病院の心療内科で、躁鬱病の診断を受け、同年一一月二一日まで、同科に通院した(実通院日数四日)。
(六) 亡保広は、これと並行して、同年一〇月二六日、アキヨシ整形外科病院で、左膝前十字靱帯断裂の診断を受けた。
(七) 亡保広は、同年一一月二四日、神大病院精神科で、躁鬱病との診断を受け、同月二七日から同年一二月二〇日まで、同病院に入院した(許可外泊の後、病棟に戻らなかつたため、実際の入院は同月一六日まで。)。
(八) 亡保広は、同月二〇日、出身高校に出かけ、授業中の教室に入室しようとしたために教師に制止され、右教師に対してカッターナイフをちらつかせた上、これを殴るという事件を起こした。
そして、警察官同道で明石土山病院を訪れ、躁鬱病の診断を受けて、同日から平成二年一月二二日まで、同病院に入院した(許可外泊の後、病棟に戻らなかつたため、実際の入院は平成元年一二月三一日まで。)。
(九) 亡保広は、平成二年二月一五日から同年六月一九日まで、(六)記載のアキヨシ整形外科に、左膝前十字靱帯断裂の治療のために通院した(実通院日数四六日)。
また、亡保広は、これと並行して、同年二月二〇日から八月七日まで、新須磨病院心療内科に通院した(実通院日数一一日)。
以上によると、亡保広の外傷による入院期間は一〇日間((一)ないし(三))、これによる通院期間は平成元年八月二五日から平成二年六月一九日まで実通院日数四九日((四)ないし(六)、(九))、躁鬱病による入院期間は三二日間((七)及び(八)の実入院日数)、これによる通院期間は平成元年一〇月二五日から平成二年八月七日まで実通院日数一六日((五)、(七)、(九))である。
3 躁鬱病の治療と本件事故との因果関係
(一) 1で認定した事実によると、亡保広の既往症である躁鬱病は、本件事故当時、完治していたとまではいえないものの、少なくとも同人が日常生活を営む上では全く影響がなかつたことが認められる。
そして、前記争いのない事実及び甲第三〇号証、原告角野賢子の本人尋問の結果、弁論の全趣旨によると、本件事故は被告の一方的過失によるものであること、本件事故は亡保広の休暇中に起きたものであること、本件事故により亡保広は頭部にも相当程度の外傷を受けたこと、本件事故の加害者である被告の存在がしばらく明らかではなかつたこと、その後の補償交渉が円滑に進行しなかつたことなど、さまざまの事情が亡保広の不安をかきたて、これが直接の要因となつて同人の躁鬱病を悪化させたことが認められる。
したがつて、本件事故後の同人の躁鬱病の治療と本件事故との間には、相当因果関係がある。
(二) ところで、被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とがともに原因となつて損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度などに照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法七二二条二項の規定を類推適用して、被害者の疾患を斟酌することができるものと解するのが相当である(最高裁昭和六三年(オ)第一〇九四号平成四年六月二五日第一小法廷判決・民集四六巻四号四〇〇頁)。
そして、前記認定のとおり、本件事故が、亡保広の躁鬱病を悪化させた直接の要因であるとはいえ、本件事故当時、亡保広の躁鬱病は未だ完治していたとはいえない状態であつたのであるから、本件において、本件事故後の亡保広の躁鬱病に関する治療費全部を被告に賠償させるのは公平を失すると解される。
そして、前記認定事実によると、本件事故後の亡保広の躁鬱病に関する治療費のうち、被告にその八割を負担させるのが相当である。
4 亡保広の自殺と本件事故との因果関係
(一) 3(一)で述べたのと同じ理由により、亡保広の自殺と本件事故との間には、相当因果関係がある(最高裁平成五年(オ)第五六一号同年九月九日第一小法廷判決・裁判集民事一六九号六〇三頁参照)。
(二) しかし、他方、甲第三〇号証、原告角野賢子の本人尋問の結果、弁論の全趣旨によると、亡保広が自殺にまで至るほど躁鬱病を悪化させたのは、神栄石野証券に就職し、それまでの大学生生活から社会人生活へと大きく変わつた環境に、躁鬱病の既往症を有する同人が適応することができなかつたこともその一要因であることが認められるから、3(二)で述べたのと同じ理由により、亡保広の死亡による損害のすべてを被告に賠償させるのは公平を失すると解される。
そして、前記認定事実によると、亡保広の死亡による損害のうち、被告にその二割を負担させるのが相当である。
二 争点2(損害額)
争点2に関し、原告らは、別表の請求額欄記載のとおり主張する。
これに対し、当裁判所は、以下述べるとおり、同表の認容額欄記載の金額を、損害として認める。
1 治療費
(一) 外傷に関するもの
(1) 外傷に関する治療費として、次の金員合計金四三万四九九二円の損害が発生したことは当事者間に争いがない(原告は、豊岡病院の治療費を金一二万七一五二円と主張するが、被告が次のとおり不利益な陳述をする。)。
丹後中央病院 金二万一四一〇円
豊岡病院 金一二万九四〇二円
高橋病院 金七万九二八〇円
アキヨシ整形外科病院 金二〇万四九〇〇円
(2) 甲第六号証によると、亡保広の神戸労災病院の治療費が金五五二〇円であることが認められ、甲第二一号証によると、これが外傷に関する治療に要した費用であることが認められる。
(3) 甲第七号証の二、弁論の全趣旨によると、亡保広の新須磨病院の治療費のうち、健康保険該当分の患者負担額金二七〇〇円が、外傷に関する治療に要した費用であることが認められる。
(4) 甲第一一号証によると、亡保広の外用薬代として金三五二五円を要したことが認められ、弁論の全趣旨によると、これは、アキヨシ整形外科病院の指示によつて調剤されたもので、外傷に関する治療に要した費用であることが認められる。
(5) (1)ないし(4)の合計は、金四四万六七三七円である。
(二) 躁鬱病に関するもの
(1) 甲第七号証の二及び四によると、新須磨病院において、亡保広の躁鬱病の治療費として金一三万三二三〇円(甲第七号証の二のうち自由診療分金三万八五〇〇円及び同号証の四の金九万四七三〇円の合計)を要したことが認められる。
(2) 甲第八号証の二によると、神大病院において、亡保広の躁鬱病の治療費として金一〇万三三〇五円を要したことが認められるところ、原告が主張する金一〇万〇七三〇円(訴状別紙治療費内訳)の範囲でこれを認める。
(3) 甲第一〇号証の二及び三によると、明石土山病院において、亡保広の躁鬱病の治療費として金二六万二四〇二円を要したことが認められる。
(4) (1)ないし(3)の合計は、金四九万六三六二円であるところ、争点1に対する判断の3(躁鬱病の治療と本件事故との因果関係)で判示したとおり、被告に負担させるべき躁鬱病に関する治療費は、その八割とするのが相当である。
したがつて、次の計算式により、金三九万七〇八九円(円未満切捨て。以下同様。)が、被告の負担すべき躁鬱病に関する治療費である。
計算式 496,362×0.8=397,089
(三) (一)及び(二)の合計は、金八四万三八二六円である。
2 入院雑費
争点1に対する判断の2(亡保広の入・通院の状況)で判示したとおり、亡保広は、外傷の治療のために一〇日間、躁鬱病の治療のために三二日間、それぞれ入院したことが認められる。
そして、入院雑費としては、一日あたり金一三〇〇円の割合で認めるのが相当であるところ、躁鬱病に関する入院については、争点1に対する判断の3(躁鬱病の治療と本件事故との因果関係)で判示したとおり、被告にその八割を負担させるのが相当である。
したがつて、被告が負担すべき入院雑費は、次の計算式により、金四万六二八〇円である。
計算式 1,300×10+1,300×32×0.8=46,280
3 入院付添費
原告角野賢子の本人尋問の結果、弁論の全趣旨によると、亡保広が高橋病院に入院中の八日間、家族の付添看護が必要であつたことが認められ、その費用としては、一日あたり金四五〇〇円の割合で認めるのが相当である。
したがつて、入院付添費は、次の計算式により、金三万六〇〇〇円である。
計算式 4,500×8=36,000
4 入通院慰謝料
争点1に対する判断の2(亡保広の入・通院状況)で判示した入通院期間、前記争いのない本件事故の態様、前記認定の亡保広の傷害の部位及び程度、並びに、躁鬱病に関する入通院の費用については被告にその八割を負担させるのが相当であることなど、本件にあらわれた一切の事情を総合して考えると、被告が負担すべき入通院慰謝料を金一〇〇万円とするのが相当である。
5 死亡による損害
(一) 逸失利益
甲第一三、第一四号証によると、亡保広は大学を卒業した男子で、神栄石野証券に勤務していたものの、死亡時にはこれを退職していたことが認められる。
そして、亡保広の死亡による逸失利益を算定するにあたつては、賃金センサス平成二年度版第一巻第一表の産業計、企業規模計、男子労働者、旧大・新大卒、二〇~二四歳に記載された金額(これが年間金二七九万七二〇〇円であることは当裁判所に顕著である。)を、死亡時である満二三歳から満六七歳まで得る蓋然性が高いものとして、生活費控除率五〇パーセント、中間利息の控除につき新ホフマン方式(本件事故時亡保広は満二二歳であり、一年の新ホフマン係数は〇・九五二三、四五年の新ホフマン係数は二三・二三〇七である。)によるのが相当である。
したがつて、亡保広の死亡による逸失利益は、次の計算式により、金三一一五万八五七〇円となる。
計算式 2,797,200×(1-0.5)×(23.2307-0.9523)=31,158,570
(二) 慰謝料
亡保広の死亡による慰謝料は、4で判示した一切の事情及び同判示の入通院慰謝料として金一〇〇万円を被告が負担すべきことであることに鑑み、金一七〇〇万円とするのが相当である。
(三) 葬儀費用
弁論の全趣旨によると、原告角野進が亡保広の葬儀費を負担したことが認められるところ、同人の年齢、職業、その他の一切の事情を考慮すると、これを金一〇〇万円とするのが相当である。
(四) (一)ないし(三)の合計は金四九一五万八五七〇円であるところ、争点1に対する判断の4(亡保広の自殺と本件事故との因果関係)で判示したとおり、被告に負担させるべき亡保広の死亡による損害は、その二割とするのが相当である。
したがって、次の計算式により、被告が負担すべき亡保広の死亡による損害は、金九八三万一七一四円(うち葬儀費用相当分は金一〇〇万円の二割の金二〇万円)である。
計算式 49,158,570×0.2=9,831,714
6 損益相殺
1ないし5の合計は、金一一七五万七八二〇円である。
そして、被告が、金五八万三二六七円を支払つたことは当事者間に争いがないので、これを損益相殺として控除すると、控除後の金額は、金一一一七万四五五三円である。
7 相続
前記争いのない事実のとおり、原告両名が、亡保広を各二分の一の割合で相続した。
したがつて、原告らの相続分は、原告角野進が金五六八万七二七六円、原告角野賢子が金五四八万七二七六円である(原告角野進が葬儀費用相当分金二〇万円を負担。)。
8 弁護士費用
原告らが本訴訟遂行のために弁護士を依頼したことは当裁判所に顕著であり、右容認額、本件事案の内容、訴訟の審理経過等一切の事情を勘案すると、被告が負担すべき弁護士費用としては、原告らそれぞれにつき各五〇万円、合計金一〇〇万円とするのが相当である。
第四結論
よつて、原告の請求は、主文第一項及び第二項記載の限度で理由があるからこの範囲で認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 永吉孝夫)
別紙
<省略>